ナローマルチビーム測深機(SEABAT 8125)による精密深浅測量
1.はじめに
深浅測量は、基本的に測量船を用いて測位・測深を行う作業であるので、測位精度、測深精度及び船体動揺の影響が測量成果の質を大きく左右する。
近年、電波測位技術や音響測深技術、それらの信号制御やデータ収録・処理を迅速に行うコンピュータ技術の飛躍的な発展により、
深浅測量の高精度化・高分解能化が可能となった。
ナローマルチビーム測深は、発信ビームを細かく(narrow beam)し扇形に送受信することにより、海底面を面的に測深することが可能である。
また、各種センサーにより各種ノイズ(船体動揺の影響等)を除去できる高精度の深浅測量が行えるシステムである。
2.測深方法の概要(クロスファンビーム方式)
SEABATナローマルチビーム測深機は、送波器と受波器が分離され直交するように配置されている。
送波器から海底面に向かって扇形に拡がるビーム(ファンビーム)を発信し、同時に受波器では送波と直交する扇形のビームを形成させることにより
反射波を待ち受け、そのクロスした点でそれぞれの測定値を取得するため、クロスファンビーム方式と呼ばれる(図-1参照)。

図−1 クロスファンビームの測定原理
3.シングルビーム測深との差異
現在、主に行われている測深方法(シングルビーム測深)と比べると、測深精度を決めるビーム幅、測深ピッチが大きく異なるため、以下に示す様な差がある。
4.本システム開発に至る技術的背景
本システムが開発可能となった技術的背景として、先述したように電波測位技術、音響測深技術及びコンピュータ技術の飛躍的な発展がある。
その発展の状況は下図に示すとおりである。これにより、位置精度は約10kmから数cmのオーダーへ、測深分解能を決める音響ビーム幅は6°×1本から0.5°×240本へ、
データを高速処理できるコンピュータの大きさ・価格は「1部屋大・19億円」から「ノート大・10万円台」と大きく性能向上・低廉化・小型化が図られている。
5.実証試験結果
ナローマルチビーム測深機(SEABAT8125)の能力を検証するため、南さつま市坊津町秋目の秋目漁港周辺海域において実証試験を実施した。
その結果の一部を以下に紹介する。

実証試験場所と測深鳥瞰図

実証試験の状況
@ 事前準備
SEABATを搭載する船自体は海に浮かぶ物体であるので、波の影響を受け横揺れや縦揺れなど常に不規則に動揺している。
従って、船に固定されたソナーヘッドがどこを向いているか判らない様では、どんなに高精度・高分解能の機器でもまったく意味をなさなくなる。
又、水中音速は便宜的に測深機上では毎秒1500m/sと設定されており、水中音速自体も海水の温度、塩分及び圧力により変化するため、それらの補正が必要となる。
SEABATでは、測深作業に入る前に、現場海域で船を回頭させ、ドリフトさせながら船首方位のチェック・船体動揺のチェック(船の重心位置の測定等)・水中音速の測定を実施し、
補正用データを取得してから調査を実行する。
A 測深結果
水深が概ね20m程度であったため、20cm×20cmメッシュの測深データが取得された。
測深結果は図-2に示すとおりである。防波堤内の海底に形成されたサンドウエーブ(砂浪)や防波堤基礎に使用されたX形被覆ブロックの形状が明瞭に把握できていることが判る(図-3参照)。
この様に、ナローマルチビーム測深機は従来の測深方式では把握できなかった海底の詳細な情報を把握できるのが特徴である。

図−2 ナローマルチビーム測深機(SEABAT8125)による精密測深結果

図−3 SEABAT8125によって得られた海底地形及び分解性能の状況(鳥瞰図)
6.おわりに
ナローマルチビーム測深機は、分解能がこれまでの測深機に比べると飛躍的に向上しており、又、面的な測深が可能なことから、
港湾、漁港・漁場の管理や海域内に設置された構造物の点検・管理、災害による被災状況の把握等に非常に有効なシステムとなるものと考えられる。
なお、実証試験に際しては鹿児島県加世田土木事務所に多大なお力添えを頂いた。この場を借りて謝意を表します。